
コンパクトなシステムトレード
財務比率を算出する意図にもどって、比率の本来の意味を考えてみよう。
そして、これらの財務比率をどのような比較において利用するか、比較をダイナミックに展開していくことでいかにして個々の企業の収益や資金繰りの構造の解明に迫ることができるかを考えてみよう。
1売上成長率の特色をつかむ年間の売上合計額を前年のそれと比べたものである。
売上の増加額を前年の売上合計額に対する百分比で表わすとわかりやすい。
売上成長率(%)。
売上増加額X100。
前年の売上合計額。
毎年の売上成長率を過去10年間にわたり算出すると、その企業の売上の特色をつかむことができる。
(図表3-3)のAのパターンは、前半5年間は売上が急成長を続けていたが、後半に入って成長が鈍化している。
このパターンの例としては、チェーン・ストア経営の会社がある。
チェーン店網の急激な拡大を図っていた前半5年間は、店舗増がそのまま売上増に結びついていたため、売上は2ケタ成長を続けた。
しかし、チェーン展開を一通り終了し、新規開店店舗数が鈍化するなかで、既存店の活性化を図っている後半5年間の売上の伸びは、対照的に緩やかなものになっている。
この売上の構造をさらに正確につかむためには、同期間について、店舗数、売場面積、地域別売上、主要店の売上などを調べねばならない。
また、それらを、地域ごとの全小売業売上金額の推移などと比べて、その会社がシェアを伸ばしているかどうかを検討することも必要であろう。
Bのパターンは、売上の振れが激しいところに特色がある。
景気の変動とともに揺れ動く設備投資動向を反映する工作機械メーカーの売上やエンジニアリング会社の売上は、このように大きな変動をみせる。
需給関係が比較的安定した業種の売上がCのパターンである。
新製品の開発や新規参入が少なく、大きな売上増加はないものの、減りもしないという状況が続いている。
このような「安定」がなぜ可能であったのかを探り、今後も続くかどうか、続かないとしたら売上の動向はどうなるのかを予想する。
Dは、鉄道や電力などの料金認可業種にみられるパターンである。
製品サービスの普及率がある程度の高さに達しているために顧客数の急増はすでに見込めないので、料金改訂がない限り、低い成長率にとどまっている。
しかし、ーたび強制力のある料金改訂が行われると、売上は大きく増大する。
Dのパターンの分析では、顧客数と価格を同期間について、分析しておかねばならない。
代替する製品サービスが存在する場合には、価格改訂と同時に、顧客数が減ることもある。
2売上構成比とその推移をみる。
売上合計額は、企業の膨大な活動の積み重ねの結果である。
1兆円の売上の総合電機メーカーの場合、100円の電池から数億円のコンピュータまで、種類も金額もさまざまなものの販売結果の合計が売上である。
そこで、売上の動向を分析するには、売上合計額をいくつかの部門に分けて、それぞれの推移をみねばならない。
分析の成果は、部門をうまく分類できるかどうかに、ある程度左右される。
分け方には、製品サービスそのものの質の違いで分ける製品別売上と、製品サービスの顧客の違いで分ける販売先別売上の2種の分け方がある。
第1の製品別売上については、企業の内部管理としては、電池売上からコンピュータ売上にいたるまで品目ごとの売上が集計されているはずで、ある。
しかし、有価証券報告書等で投資家に提供される売上情報では、すでにある程度のグループ分類がなされ、6-10項目くらいに集計した形になっていることが多い。
次頁の(図表3-4)は3部門からなる売上構成の例である。
ここでは製品分野ごとの売上成長のパターンの特色を読まねばならない。
A部門はこの会社の売上の3分の2を占める主要部門であったが3年前にB部門に売上を抜かれ、いまや二番手部門になっている。
B部門の躍進には、いくつものストーリーが考えられる。
B部門そのものが伸びたのか、A部門が低迷したので相対的にB部門の比重が上がっただけなのか。
B部門売上の成長は、業界全体としての伸びと同じなのか、あるいは、この会社独自の新製品が当たったので伸びたのか。
同様の考察を、A部門についてもしなければならない。
したがって、構成比の推移をみる場合には、一方で、部門ごとの売上成長率を確認することが不可欠で、あることがわかる。
部門のくくり方も、必要に応じて、たとえば素材に近いグループ、加工した最終製品に近いグループなどに集計し直すことも重要である。
第2の販売先別売上は、顧客の特性によって分類しようというものである。
どこで売れているのか、誰が買っているのかに焦点を当てている。
つぎは、こうした分析の例である。
(1)地域別売上一国内売上および輸出売上、県別売上(小売業の場合)、国別輸出。
(2)個人向け売上および企業向け(事業用)売上。
(3)顧客企業の業種別売上。
(4)消費者への直接販売および代理店向け販売。
さらに、第1の製品別の要素と第2の販売別の要素を組み合わせた分析、すなわち、どこで何が売れているのかを検討することも大切である。
有価証券報告書の売上情報の場合、輸出がある程度大きい企業であれば、製品別売上と輸出売上(あるいは国内売上)の2要素を組み合わせることができる。
3売上利益率を比較する。
売上から費用を差し引いたとき、どれだけが利益として残るかを示すのが売上利益率である。
売上があがることが事業の最初の、そして最大の一歩であり、売っても売っても費用を支払ったあとに利益が全く残らないのでは、事業の継続はありえない。
そこで、売上に対してどれだけの割合で利益が手元に残るかが重要になる。
どの種類の費用を差し引いた段階で利益をとらえるかによって、いくつかの種類の売上利益率が得られる。
売上利益率をみる場合には、その水準を同業他社と比べると同時に、過去の一定期間の推移をみることが大切である。
売上総利益率は粗利率とも呼ばれる。
製品や商品の製造原価や仕入原価を売上から控除したあとの利益(組利益〕の売上に対する割合を示す。
製造原価としては、原材料費、製造設備の減価償却、あるいは製造に従事している従業員の人件費などが主なものである。
販売数量の増加が著しいと、設備の稼働率が上昇し、従業員の作業効率も上がるので売上総利益率の改善要因となる。
また、原材料価格の変動、さらには輸入原材料に依存している場合には為替相場の変動によって、売上総利益率も変動する。
売上の動きのなかで、販売価格と数量のいずれの要素が変動しているかを理解し、商品構成の変化を確認すると同時に、原価を構成する各要素の特性をつかまねばならない。
売上総利益から販売および一般管理費(以下、SGA費と略す)を控除したのが営業利益である。
営業利益は、企業がその本来の事業から得た利益である。
金額そのものが伸びていること、売上に対する比率(マージン)が広がっていることが大切である。
業種、業態の違いによっても、マージンの高さは異なる。
企業が、ある経費を製造原価とみなすかSGA費とみなすかは、同ーの企業においても、途中で変わることがあるほどで、各社間で必ずしも同じとは限らない。
したがって、費用を原価とSGA費の合計でみることも必要である。
経常利益は、資金の運用・調達に係る活動の結果を、本業の利益に加えたものであり、通常の企業活動より得た利益の合計といえよう。
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